2019年2月13日開催

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「PERSEU講演会」参加学生レポート報告

「PERSEUS講演会」参加した学生に講演についてのレポートを書いていただきました。

 


○工学域 機械系学類 1年 米山 まうむ さん

今回の文部科学省宇宙航空科学技術推進委託費の宇宙人材育成プログラム(以下PERSEUSとする)の講演会では株式会社アストレックス会長菊池秀明様にお越し頂き,ご講演いただきました.一回生の私はCan-Satプロジェクトを終え,衛星開発へ合流したばかりで正直なところ衛星のなんたるかについては全くわからない状態で今回のご講演を拝聴することになり,技術的な内容に関してはわからない点も多々ありましたが,わからないなりにも,今回のご講演から感じたことを稚拙ながら言葉にしたいと思います.

まず,衛星電源には三つのキーポイントがあり,一つ目が「ロバスト性」,二つ目が「十分な打上振動耐性と宇宙耐久性」,三つ目が「高い電力効率」ということでした.このあたりについてCan-Satの経験と照らしてみると,Can-Sat開発では,乾電池を使った電源を使用していて,ただただマイコンやモータードライバへ接続しているだけで,機器にトラブルが起きても電力供給を途絶えさせないことであったり,緊急停止しても自己復帰ができることであったりといった能力は考慮していないことから,Can-Sat開発で必要な要求はどれほど容易なものであったかを感じさせられ,また衛星開発というものがどれほど高いものを要求されるのかということをこの初めの部分だけでも感じさせられました.冗長設計に関するお話の中でのシンプル・イズ・ベストではないというお言葉に意外さを感じたのと同時に,そういえばCan-Sat開発を振り返って開発の過程で先輩方からの重要な機能はできる限り冗長させるようにと助言を受けて書いたプログラムはたしかに複雑化していたことに思い当たるにつけて,この点は衛星開発にも通じる部分があると感じました.冗長に関しても電力効率の点に関しても工夫を加えすぎるとそれはそれで電子回路が複雑になりすぎるというデメリットも発生すると思われるのでトレードオフの関係にあるのだろうかと思いました.衛星開発全体で見たとき目下のタスクの大きな照準である安全審査において電源系は特に厳しい目を向けられるというお話で,たしかにエネルギーの塊であるバッテリーを扱う電源系は安全性を確実に証明しなければならないというのは道理であって,Can-Sat開発でLi-ion電池が使用禁止になっていることからも電源という分野に安全面での規制や条件が厳しくかかることは納得できました.ソフトスタートについては今回のご講演で初めて耳にし,電子回路的な知識が必要になる問題ということで,現在回路の知識は特に乏しいと感じているので今後の衛星開発に少しでも貢献できるように電子回路のこともしっかり勉強しなければならないと感じました.

 


現代システム科学域 マネジメント学類 2年 栢割 脩平 さん

今回のPERSEUS講演会では,株式会社アストレックスの菊池秀明氏にご登壇いただいた.講演は3部構成で,衛星の電源装置の設計に関して,実例を交えながら詳しくご講演いただき,非常に充実した時間を過ごすことができた.

第1部では衛星電源のキーポイントとしてロバスト性,十分な打ち上げ振動耐性と宇宙耐性,高い電力効率の3つが求められることを学んだ.衛星電源が故障し動作を停止してしまうと,衛星はただの宇宙ゴミと化してしまう.これを防ぐために電源の一部が故障しても電源供給を続けること,そして他の機器が故障しても巻き込まれずに動作し続けることが必要である.菊池氏はこのような役割を担う電源系のことを「縁の下の力持ちだ」と表現されていたが,これを聞いて実際に私も衛星を開発する中で,電源が正常に動くことを前提として軌道上での動作を考えてしまいがちであることに気づくことができ,電源装置が果たす役割の大きさを再認識することができた.またこれまで基板上のコネクタのピン数は意識したことがなかったが,誤った配線を防ぐために同一ピン数のコネクタを隣接させないといった工夫が有効であるということを学べて,新鮮に感じた.

第2部では衛星の安全審査で求められるバッテリの安全性について学んだ.その中でも特にダイオードに関して,それまで私はダイオードが持つ整流作用を疑ったことがなく逆方向の漏れ電流の存在を意識したことがなかったので,実は漏れ電流のためにバッテリが空になることがあるという話が衝撃的だった.またバッテリの放電を抑えるためにバッテリ温度を10度から20度程度に保つ必要があることが分かり,温度センサによる監視とヒータによる温度制御の重要性を知ることができた.

第3部では電子回路設計に関して,菊池氏がこれまでに関わってこられた衛星での実際の回路例を交えながら具体的に学ぶことができた.電源の機能を維持するうえで警戒すべきラッチアップについても,原理から図を用いて説明していただき,非常にイメージしやすかった.また現在SSSRCで開発しているCubeSat「ひろがり」ではOBCや一部センサなどにCMOS部品を使用しているが,CMOSのICはSELが生じやすいという欠点があるということを知ることができ,電子ヒューズや保護抵抗の役割と重要性を再認識することができた.

このように,今回の講演では衛星電源装置に関して幅広く詳細に学ぶことができた.普段衛星を開発する中で,回路やバッテリ周りの設計についてはあまり考えることができていなかったので,今まで意識していなかった部分について実例を交えながら学ぶことができた今回の講演は非常に有意義だった.衛星に関してより幅広い知識と経験を得られるように,「ひろがり」について普段から詳細な設計を気にしながら開発を進めていきたいと改めて感じた.