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Startup weekend OSAKA space参加学生レポート報告~その1~

2020年2月21日~23日に開催されました「Startup weekend OSAKA space」に参加した学生が、参加についてのレポートを書いてくれました。(その1)


○工学域 機械系学類 航空宇宙工学課程 2年  上田滉也さん

Startup Weekend Osaka Space に参加して

私は2020年2月21日~2月23日に開催されたStartup Weekend Osaka Spaceに参加しました。このイベントは54時間で企業を体験しようというイベントであり、参加者は数人からなるチームを作り、3日間で最小限のビジネスモデルを作りました。

1日目は、懇親会と各自のビジネスアイデアを発表する「1分ピッチ」を行い、チームづくりを行いました。私も事前に考えてきたアイデアを発表しましたが、残念ながら最終候補に残ることはできませんでした。他の参加者の方から意見を伺うと、「できそう」など、実現可能性に関しては肯定的な評価がいただけたものの、「おもしろそう」といった意見はあまり見られませんでした。この経験から、アイデアを考えるときはビジネスとして成立するかどうかより、多くの人の興味・関心を引き寄せられるかどうかが重要であることを学びました。

1分ピッチ後、私は「衛星データを活用したエンタメ事業」を掲げていた方のチームに入りました。私のチームは、大学の講師(ハッカー)・企業経営者(ハッカー)・サラリーマン(リーダー・ハスラー)・大学生(私・デザイナー)の4人からなり、全員が異なるバックグラウンドを持つ人から構成されていました。また、年齢差も40歳ほどあり、最初は互いに遠慮しながら会話をしていました。しかし、リーダーが率先して、メンバーの意見を聞いたり意見をまとめたりするなど意見交流が盛んになるよう努めてくれたおかげで、円滑に話し合いを行うことができました。

また、ファシリテーターも「顧客を見つけること」「自分たちが解決しようとしている課題は本当に課題なのか」を繰り返し指摘していただき、そのことを念頭に置きアイデアを議論し合いました。そのおかげで、2日目昼には「水中での無重力体験とVR(仮想現実)を利用した宇宙体験エンタメ」というアイデアを作り上げることができました。

2日目午後からのメンタリングでは、このアイデアをJAXAの方と、迷宮エンタメ事業を展開する企業の経営者の方に見ていただきました。この方々から、水中での体験になると安全対策が必要になること、水中での無重力体験は実際とは大きく異なる可能性があること、VRなどの最新技術に頼るだけではすぐ飽きられてしまうこと、このアイデアでは目新しさがないことなどの厳しい指摘をいただきました。メンタリングを通して、メンタリングを受ける前は素晴らしいと思っていたアイデアはまだまだ穴だらけだということ、また、実際にアイデアをビジネスにしていくためにはもっと実現可能性やエンタメとしての面白さ、特に「自分たちが自信をもって、そのアイデアを面白いと思えるか」が重要であることを学びました。

メンタリング後、アイデアを班員の間で練り直そうとしましたが、互いの意見が衝突し、一時はチーム解体の危機を迎えました。その危機をなんとか乗り越え、話し合いを進めていくと、メンバーの大学講師の方から「VRではなくて、実際のリアルタイムの映像を使った擬似体験にしたらどうか」という意見が出て、以降はこのアイデアをもとにビジネスアイデアを仕上げ、発表資料を作っていくことになりました。

この過程の中で様々なことを学び、体験しましたが、その中で特に印象に残ったことが3つほどあります。

1つ目は、スタートアップの際には様々な技術や教養を身に着けておく必要があることです。先に述べた、大学講師の方の意見は自身の研究や学習してきたことのバックグラウンドがあったからこそ出てきたものであり、この意見がなければ私達のビジネスアイデアは陳腐なものになってしまったでしょう。スタートアップは競合他社とは違う「ユニークな技術やアイデア」が必要不可欠であるため、まだ世に広まっていない技術や知識こそ、スタートアップの段階で必要なものだと実感できました。

また、ハッカーである企業の経営者の方は、わずか10時間程度でISSと地球の3Dモデル、及びそれらを使って私達のビジネスアイデアのプロトタイプを作り上げました。そのプロトタイプの完成度は驚くほど高く、この短時間でそれを作り上げてしまう技術力に理系の学生としてとても感動しました。将来、私が起業などをする際には、技術屋として関わっていきたいので、彼のようなアイデアを自分の持つ技術で素早く実現する能力は学生のうちに身に着けておきたいと強く考えるようになりました。

2つ目は、立場や専門の違う人同士で意見をすり合わせることの大変さと、必死に理解しようとすることの重要さです。私の班は年齢や専門の両方が全く異なる人で構成された班だったので、ある意見が専門的すぎて理解できない事が多々ありました。理解したふりをして流すことは簡単ですが、私はこの場に学びを目的に来たので、必死に質問をしました。すると、徐々に理解ができてきて、自分も意見ができるようになり、班内での理解度も上がり、より良いビジネスアイデアを生み出すことができたと思います。この経験から、理解できなくても必死に理解しようと食らいつき、粘り強く話し合いを続けることの重要さを実感しました。

3つ目は、発表資料を見やすく、聞く人の印象に残るように作ることの大切さです。今回の発表は5分間と非常に短いため、簡潔かつインパクトのある発表にする必要がありました。私はデザイナーとして参加したので、写真や説明用の映像を作成しました。その際に、班員から「ここのデザインはこうしたほうが良い」などの指摘を多くいただきました。特にビジネスモデルを示す図では、お金とサービスの流れを区別して示すべきだという指摘は、自分には思い浮かばなかったので悔しかったです。これからの人生で発表資料を作る機会は多くあるので、デザインについても時間のある学生時代に学んでおきたいと感じました。

このようなことを学びながら、3日目の15時までに発表資料を作り、発表を行い、8チーム中3位という嬉しい結果を得ることができました。この3日間でアイデアの作成から最小限のビジネスモデル作成に至るスタートアップの基礎を一通り体験することができ、私の中での起業に対するハードルが下がりました。また、実際に起業を目指す方の考えや、審査員の方々の指摘を知ることができ、これからの学生生活をどのように送るべきかや将来の展望について理解を深めることができました。

また、このようなイベントは起業を考えていない学生にとっても非常に有意義で、学生は積極的に参加したほうが良いと思いました。実際、今回のイベントでも参加者の三分の一程度は学生で、とても熱意のある人が多い印象を受けました。私もこうしたイベントに参加するのは初めてでしたが、こうした活動に日頃から積極的に参加する学生と参加しない学生では、経験に差がついてしまうのかもしれないと痛感しました。

最後に、今回このような素晴らしいイベントを準備していただいた方々に厚く感謝申し上げます。サポートの方々は非常に親切かつフレンドリーで、3日間をストレスなく楽しく過ごすことができました。料理もとてもおいしかったです。このような機会が今後あれば、是非参加したいと思わせられるような、密度の濃い充実した54時間でした。

ビジネスモデル説明図