2020年10月23日開催

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2020年度 第4回「PERSEUS 講演会」を開催しました

今回は、JAXAにて国際宇宙ステーション(ISS)の開発を担当されておられた肥後尚之氏をお招きし、宇宙開発をテーマにご講演頂きました。

日   時 2020年10月23日(火)  16:15~17:45
参加数 会場;学生42名(B1 10名,B2 9名,B3 9名,B4 6名, M1 4名,M2 3名,D2 1名)、教職員・関係者7名

オンライン;学生18名(B1 2名,B2 5名,B3 3名,B4 2名, M2 5名,D2 1名)、教職員・関係者1名

 

 

 

 

 

 

今回の開催は、感染症拡大防止策を取りながら現地・オンライン開催、両方式での初めての開催となりました。講演では、”職業”としての宇宙についてもお話していただき、最後の質問時間では、学生より多くの質問がでており、時間ギリギリまでご回答いただきました。学生にとって有意義な時間となりました。

《講演会場の様子》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、事後アンケートについて、プログラム代表者である小木曽望教授が報告されました。

<事後アンケート>

Googleフォームを利用したアンケートに対し、学生参加者60名(対面42名、オンライン18名)のうち、51名から回答を得ました。

〇最も印象に残った内容を一言で表すと何でしょうか。

・日本の宇宙産業の規模が納豆産業と同じくらい ということと関連 15件

・スペースXなどアメリカの宇宙企業の考え方 15件
▻Guess and Go (6件) 、Failure is option(3件)を含む

・これからの宇宙開発に関わるベンチャーの重要性に関する項目 8件

・現在の日本の宇宙産業は官需が90%程度であり、今後、民需が必要という項目 7件
▻日本の宇宙研究開発体制 3件を含む

・海外と日本の宇宙開発の差 3件

・その他 3件
▻宇宙産業の生の声、3次元プリンター、宇宙飛行士

 

〇今回「宇宙としての職業」という講演を通して自。、  分が得たことや講演全体を通しての感想を記入ください。

学年ごとに代表的な感想の例を示す。4年生以上となると職業に対する意識がより具体的になることが感想にも反映されている。

B1 自分はSpaceXやAerospaceなどの企業についてある程度把握していたが、想像していたよりも日本中、世界中でたくさんの企業が宇宙を生業としていて産業として発展しているのを知り、自分がこの先どう言った風に宇宙開発に携わろうか考えなおすいい機会になった。あまり民と官の間のやり取りについては聞いたことなかったので少しリアルな話を聞くことができたのは、非常に面白かった。
B1 私はSSSRCに所属しているものの、宇宙産業についてくわしくなかったので宇宙に携わる仕事はJAXAに就職するくらいしかないのだと思っていたので民間企業でも宇宙産業に携われると知れたのが収穫だった。
B1 宇宙という分野が今までは学問の領域だと思っていたが産業分野として成立していたり、そうなろうとしていることが新鮮だった。ものに値段がつくことが大事という言葉は印象深かった。今までとは異なる世界がもうすぐ宇宙旅行や火星などへの移住という形で来ることは未だに信じられないが現実味のある話だと思った。

 

B2 宇宙産業が自分が知らない以上に多種多様な分野で進んでいることが分かった。Space Xがなぜこれほどまでに成長することができた理由が、NASAのような政府系の組織ではないため、失敗を恐れることがなく、また大量生産という開発の先のことまで考えて行っていることということなど普段講義では聞けない内部の人が知るような情報をいろいろ学ぶことができ、面白かった。
B2 お話の中で宇宙関係の仕事が変わった要因のひとつとして3Dプリンターが挙げられていたことが印象に残った。最近は3Dプリンターを使ってモデルロケットの部品を作っているため、設計や加工のしやすさを実感しており、産業に変化をもたらすことにも納得できた。3Dプリンターを使ってロケットエンジンの部品を作ろうとする企業もあると知り興味を持った。現在は学生という比較的自由な立場であるため、スペースX社のように失敗を恐れない精神でロケット開発などを進めていきたいと思った。

 

B3 日本の宇宙産業は生産コストの点でアメリカには勝てないから戦い方,特徴を別に持たなければならないという点はわかってはいたことではあるが,寂しく感じる部分があった.宇宙分野のこれからは明るいとは思うが,日本の宇宙産業は明るくなさそうだと今回の講義(産業規模,民需とのバランス,国内企業の他国製の衛星・ロケットの使用 etc…)を通して感じた.今見える未来は明るくないが,これからどうするかで未来は変わると思う.今後日本はどういう方向性をとっていくべきなのか,もしくは国という括りに縛られる考え自体が古いのか,考えさせられるところがあった.それでもやはり自分のアイデンティティをおいている国は誇れる国であって欲しいと思う気持ちが自分自身のどこかにあるように感じた.将来自分が何をするか,どう働くかはこういった気持ちに従って決めていくのが良いのか,はたまた待遇やライフスタイルを優先するのか,まだまだ考えがまとまらないなと感じた.
B3 今回の講義では,日本を取り巻く宇宙ビジネスの現状について学ぶことができました.海外の豊富な事例について写真を用いながらお話しいただけたので,宇宙ビジネスをより身近に感じることができました.

また,日本では宇宙ビジネス関連の企業はあまりないと思っていましたが,思ったより多くあったのには驚きました.この事実を知ったことで,将来の就職先を考えるうえで宇宙ビジネスのベンチャー企業も選択肢の一つに入れてもよいかなと考えるようになりました.

日本の宇宙産業には公共組織からの援助はあまり望めないと知って,やや暗い気持ちになりましたが,逆に民間が積極的に動けるチャンスと捉えてやっていくしかないと感じました.

B4 今の日本における宇宙開発事業は官需が主であるが,割り当てられる予算は非常に割合が小さい.この問題は講演前から認識していたが,改めて講演で示されたデータを見ると,いかに日本の宇宙産業の市場規模が小さいかを再認識することができた.特に納豆市場と同レベルの市場規模というお話が印象的だった.

海外では民間での宇宙開発が盛んであり,ロケットを自動車のように流れ作業で大量生産し,それにより低コストを実現している.日本でも官需から民需への移行の風潮が次第に高まってきており,民間の宇宙産業が今後成長すると見込まれている.その中で海外の宇宙開発事業とは異なる日本独自の事業アイデアが求められていることが分かった.

海外での民間宇宙開発企業の例としてSpaceXの例が挙げられていたが,SpaceXは初めて宇宙開発に,「とりあえず打ち上げてみて,不具合が出たら修正してやり直す」というソフトウェア的管理法を導入したというお話が非常に面白かった.かねてからなぜSpaceXは信頼性と安全性を求められる宇宙産業を舞台に,再利用可能ロケットの度重なる実験やテスラ車の火星軌道への投入など,大胆な事業を次々に展開することができるのか疑問に思っていたが,その背景には日本企業とは大きく異なる価値観が存在することを知り,今後数を増やすであろう日本の民間宇宙開発企業は過去の事業や開発モデルに捉われずに,新しいビジョンをもって宇宙産業を発展させていく必要があると改めて感じた.

B4 宇宙が成長産業であることを強く意識づけられた.

また,今後も安定した成長が見込まれることから職業として宇宙を目指すことが今まで以上に有力な選択肢となった.

工学という枠にとらわれず産業としての宇宙を学ぶことができ非常に有意義な講演だった.

 

M1 SPACE Xの開発体制の話が一番印象に残りました.今までのNASAの体制では何年もかけて膨大なコストがかかっていた開発を,短期間のうちに安く仕上げてしまうことにSPACE Xの素晴らしさを感じ,自分が携わっている人工衛星の開発体制にも反映していければと感じました.特にGuess and Goの精神は必要だと思いました.
M1 自分は化学を専門としておりますが宇宙開発に関心があり、就職活動を行うにあたってお話を参考にできればと考え、今回の講演会に参加させて頂きました。肥後氏のご講演は非常に興味深く、大企業には大企業の、ベンチャー企業にはベンチャー企業の宇宙へのアプローチがあることなど、これらをJAXAの方から説明して頂くことで、宇宙開発をより身近なものとして感じることができました。また航空宇宙工学分野の人間に比べて自分は、宇宙工学においては知識が圧倒的に不足しているため、職業として宇宙開発に関わるためには基礎からきちんと学ぶ必要があることを実感しました。もしまた機会があれば、太陽電池などの化学開発と宇宙開発の関連について、より詳しくお話を聞くことができればと存じます。
最後になりますが、今回の講演会に参加させて頂き、感謝申し上げます。
今後もこのようなご縁があれば幸いです。ありがとうございました。

 

M2 一番印象に残っているのが、従来の宇宙開発は”Failure Is Not an Option”という考えにのっとっており、失敗をしないために多大な労力をかけていたが、SpaceXのイーロンマスクによって、ソフトウェア開発の手法が導入され、”Guess and Go”の精神で宇宙開発をしたときに、最初は失敗続きであったは、それが徐々に実っていき、今では超安価なロケットによる輸送手段が実現した点である。
この観点から、宇宙を職業とする際の参考となる考え方と、どのような職業に就いたとしても、宇宙につながっている可能性はあるし、逆に宇宙を職業とした際にも、その考え方を他の分野に応用することができると思った。
M2 有機化学を専攻する身として、普段は触れることのない宇宙開発のリアルな部分を学ぶことが出来たことが一番大きな収穫だと思っています。実際にどのようなことをされているのか、また宇宙をフィールドにしてこられた方々の熱量に触れてみて、この業界に入りたいという想いが強くなりました。

来年から博士後期課程に進学予定ですが、宇宙を職業に出来るように精進していこうと思いました。

今回は非常に貴重な経験をさせていただき、ありがとうございました。

 

〇全体を通して

肥後氏の講演自体の面白さもあり、「宇宙を職業として考える」というテーマ自体が有意義な講演会であったと言える。

今後につなげるためには、学生の職業選択の可能性を広げる上でも「宇宙産業の現在と今後」について学生に正しい知識を伝えることが重要であろう。

大学においては、航空宇宙工学における最新研究を伝える講義はあるけれど、「航空宇宙産業」に関する講義はないため、今後、このような講義科目をカリキュラムに組み込む必要がある。

低学年段階では工学のさまざまな分野におけるビジネスと関連付けてさまざまな分野のエンジニアとしての職業の可能性を伝える講義を。、高学年では専門と強く関連付けた形式で行うのがよいと思う。今後、さらに検討してみる。