2021年3月3日開催

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2020年度 第7回「PERSEUS 講演会」を開催しました

今回はプログラム最終講演会として、NECのお二人をお招きし、アントレプレナーシップや今話題の「はやぶさ2」など探査機開発に関することをテーマにご講演頂きました。

日   時 2021年3月3日 (水) 14:00~16:40
参加数 会場;学生25名(B1 3名,B2 4名,B3 9名,B4 5名, M1 1名,M2 3名)、教職員・関係者4名

オンライン;学生21名(B1 3名,B2 6名,B3 4名,B4 4名, M1 2名,M2 1名,D1 1名)、教職員・関係者3名

感染症拡大防止策を取りながら配信会場とオンライン両方式で開催しました。北瀬氏の講演では、NECの中で新事業を行ってきた経験などについて将来仕事に就くにあたっての心構えのお話をした頂き、小笠原氏の講演では、「はやぶさ2」などの探査機開発やその巧妙な運用技術、携わった技術者のの思いを熱くご講演いただきました。各講演者の質問時間では、学生より熱心な質問がたくさんあり、時間ギリギリまでご回答いただきました。学生にとって有意義な時間となりました。

 

<北瀬氏講演の様子>

 

 

 

 

 

<小笠原氏講演の様子>

 

 

 

 

 

 

 

 

また、参加学生からレポートを書いていただきました!


北瀬さんからは大企業であるNECの中で新事業を行ってきた経験や事業例などを伺いました。新事業を行う上で難しい点として、リスクを恐れることや発想の難しさや前例がなく一から考えなければならないことなどがあり、目的や危機感などを持たないと新事業を続けることができないなど実際に新事業を行っていないとわからないことを学びました。また、最後に将来仕事をやっていくうえで必要なこととして、責任をもつこと、変化に通ずるための基礎力を持つこと、伝えたいことを伝える力、かわいがられる力をもつなどを教えていただきました。かわいがられる力が人を引き込むために重要な力であるという考え方が特に印象が残りました。
つぎに、小笠原さんから「はやぶさ2」での経験等を教えていただきました。まず、「はやぶさ」と「はやぶさ2」のミッション目的や構成についてはほとんど変わりないことや「はやぶさ2」を完成するのに限られた資金と3年ほどしか期間がないことを教えていただきました。ターゲットマーカーを開発するのにお手玉の原理を利用したなどといったものを開発するとき最終的には物理に戻るというこれから研究していくうえでも大事なことなど、ニュースでは得られない実際に携わった人しかわからないことなどを教えていただきました。「はやぶさ2」がほぼ失敗をしなかったことや水星探査機「みお」や火星衛星探査機「MMX」などこれからの衛星探査機についてもいろいろ教えていただきました。最後に、失敗は成功への道であり、再挑戦することが大事であることを学び、失敗を分析し、どういうアプローチで成功へと導くかを考える力が必要であることを実感しました。

工学域機械系学類 B2 西部諒


 先日、NECの北瀬聖光さんと元NECエンジニアで「はやぶさ」などの衛星に携わってこられた小笠原雅弘さんに講演を行っていただきました。
北瀬さんの講演では新事業開発についてや、北瀬さんがCEOを務めるBIRD INITIATIVEという会社についてのお話をしていただきました。特に印象に残っていることは新事業開発では始め方がとても大切だということです。実際に開発に携わってこられた北瀬さんだからわかる始め方の落とし穴や、危機感を持つことの重要性は新事業の開発だけでなく学生生活でも役立つと感じました。

 小笠原さんの講演では、はやぶさ2についてと、いくつかの探査機についてのお話をしていただきました。はやぶさ2のお話では実際の現場のお話やはやぶさ2が撮影した映像、CGを交えたもので当時の現場の雰囲気等が感じられました。また、はやぶさ2のプロジェクトで最もうれしかったことがタッチダウンに成功したことでもカプセルが無事帰還したことでもなく自分の担当したものについてだったことプロジェクトに実際に携わったのだと感じさせるものでした。また、衛星に運用するには人のスキルも大事であるとおっしゃっており、今後「ひろがり」の運用もあるので自分のスキルをもっと向上させなければならないと思いました。

工学域機械系学類 B2 松村昂弥


また、事後アンケートについて、プログラム代表者である小木曽望教授が報告されました。

<事後アンケート>

学生参加者46名のうち、42名 (B1: 6名,B2: 8名,B3: 12名,B4: 9名,M1: 3名,M2: 4名)の学生から回答を得ました。

1. 北瀬さんの講演

Q1: あなたが最も印象に残った内容は何でしょうか?

・「新規事業の始め方が重要」、
・「何か新しい事業を始める時には危機感が必要」、
・「新規事業を立ち上げてからの危機感には2種類あり、導入期~成長期の『チャンスを捉える危機感』と『このままでは危ないという危機感』があること」など

「危機感」や「困難さ」に対する印象が強かったようである。また、事業開始時には、始める人の圧倒的な当事者意識とともに「属人化が当たり前」という点に関する回答が多くみられた。
実際に開発に携わってこられた北瀬さんだからわかる新規事業の始め方における落とし穴や危機感を持つことの重要性は、学生にとって印象に残るものであったことが読み取れた。

 

Q2: 「新事業開発を難しくする3つの壁」(p. 24)に書かれている9つの項目の中であなたが最も共感するのはどれでしょう。また、それを選んだ理由も答えてください。

・発想 合計 9 + 1 名 (発想を選んだのが1名)
▻変化に気づかない 3名
▻バイアスがかかる 4名
▻小さな構想は非承認 2名
・ノウハウ 合計 17+2名 (ノウハウを選んだのが2名)
▻手の付け所がわからない 8名
▻未知への不安 7名
▻属人化が当たり前 2名
・組織 合計13名
▻リスクが取れない 6名
▻自部門を超えられない 2名
▻守りの専門家が多い 5名

ノウハウのうち、「手の付け所がわからない」、「未知への不安」というところが比較的多かったが、共感する点がそれぞれ異なり、すべての分野にわたっていたという点が印象に残った。

 

Q3: 北瀬氏がCEOを務める「BIRD INITIATIVE」はNECの内部ではなく、NECのそばで新規事業開発を担う別の会社として立ち上げられています。そのような立ち位置とした理由は何だと思いますか。

・「NECの内部組織にしてしまうとNECが納得しない限り新規事業を始められないが、別にすることでより自由に新規事業開発に取り組めること」
・「内部にあるがゆえに、三つの壁の組織の部分が立ちはだかってくるので、その点を取り除けるのはでかいため。」など

前問の「新事業開発を難しくする3つの壁」を取り払うための組織であることを理解した回答が多く見られた。
小型宇宙機システム研究センターは小さな組織に過ぎないけれど、「変化に気づかない」や「バイアスがかかる」などによって、新しいことに取り組みにくくなっていないかを考え直してくれる機会になってくれるとありがたいと思う。

 

Q4: 資料にはありませんが、社会人として重要なことという質問に対する回答として、「オーナーシップ」、「アジリティ」、「タフ」、「パブリシティ」、「チャーミング」について話されました。この中で、あなたが一番重要だと思ったこと、あるいは一番印象に残ったことはどれでしょう。また、それを選んだ理由も答えてください。

・ チャーミング 31名
・ タフ 6名
・ オーナーシップ 3名
・ アジリティ 2名

「チャーミング」が圧倒的に印象に残ったようである。
「チャーミング」というキーワードの意外性もさることながら、人を巻き込む力につながる点では納得がいく。
ただし、チャーミングだけでよいわけではない。ある学生の次の回答が的を射ていた。
「1番重要なのはオーナシップだと考える。これがあるからこそ「アジリティ」「タフ」「パブリシティ」が生まれてくると考える。1番印象に残ったのはチャーミング。前四つについては自分も普段から大切にしていたが、この点は少し盲点だった。」

 

2. 小笠原さんの講演

Q5: 「はやぶさ2」の話の中で、あなたが最も印象に残った内容は何でしょうか?

・ 「はやぶさ」と「はやぶさ2」のリーダーシップの違い
・ 「はやぶさ」の教訓を生かした「はやぶさ2」の完全な成功
・ ご自身が開発に関わられたターゲットマーカーの成功についての話
・ 技術を突き詰めていくと、最後はシンプルな物理法則に行きつく
・ 「はやぶさ2」の精密なタッチダウンを成功に導いたのは最後は「人間の判断」であり、完全な自律化ではないという点
・ リュウグウ到着後、「1年半」という期間にわたって、発生しうるエラーを徹底的に洗い出して、綿密な準備を行った点
・ 限られた時間の中で方策をたてる能力

この結果から、学生に主に響いた点は、
・ ミッションを成功に導くプロマネのリーダーシップ
・ 運用における人間の判断の重要性
・ 開発に携わった技術者ならではの考え方(最後はシンプルな物理法則)
という3点に分類できる。

 

Q6: 「はやぶさ2」以外に、水性探査機「みお(BepiColombo)」、火星衛星Phobosの探査機「MMX」、1998KY26へ向かっている「はやぶさ2」のポストミッションの話がありました。これらの中でどの探査機のどの部分に興味を持ちましたか。

・「みお」 25名
熱設計、軌道設計(9回のスイングバイ)、3つの衛星が分離すること など。
・「MMX」 5名
ランデブーと着地のための脚設計。
・「はやぶさ2 ポストミッション」 9名
ミッションをやり切った後も、高速自転する直径30mの小さな小惑星に11年もかけて行くこと。
・「その他」 2名
・軌道設計そのものに興味を持った 1名
・事情により前半しか参加していない 1名

最新の宇宙ミッションに対する興味を広く持ち、自分たちにも反映させてほしいと思う。